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2004-12-07

オカズになって50円

その男は暗闇から現われ、カメラに体を近づけ、
「あなたのことを見ながらしてもいいですか」
と言って、局部をいじり始めた。
本来、相手の顔が映し出されるべきモニターに、間延びしたようにそそり立った局部がアップで映し出されている。私にはそれが鼻の高い、毛むくじゃらの気さくなオジサンの顔に見えた。
「ご自由に」
私はモニターから目をそらし、どうしたものか考えていた。
「迷惑ですか」
返答に困る。
少しの間を置き、震える指で、キーボードを打った。
「そりゃぁね‥」
男は去った。
これが、私のチャットレディー初体験。男性と、Webカメラを通してチャットするお仕事。今度転職した職場、おそろしく低賃金なものだから、何か自宅でできる副業はないかと思い、始めてみた。基本的に、モニター越しに文字でお話するだけなので割り切ってしまえば楽だ。
私が登録したのはノンアダルトという位置づけのチャットサイトだが、やはり利用者の目的の多くは今夜のオカズ探しなのだろう。男性客とチャット中、見たくないモノを見せつけられた時のために女性用のウィンドウには相手のモニターを真っ暗にできるボタンがついており、事務局の監視係にリアルタイムで違反者を通報できるようになっている。
このサイトに登録する前、別のサイトのチャットレディー募集サイトに顔写真を添付して応募したら、「年齢容姿その他の理由で」不採用になった。私にはギャル的な明るい色気はない。むしろ陰気で洋服の露出度は少ない。洋服ぐらいは少し肩を出してみたり頑張ってみるとして、こういうサイトで私のような女がどれだけ需要があるのか、まだ予測がつかない。
客待ちをしながら、サイト内のチャットレディー探検をする。
明るくにぎやかなWebデザインに、女の子たちの工夫を凝らしたPR画像、楽しげなコメント。OL、人妻、お水系、学生などタイプはさまざま。本当にかわいい子が多い。中にはスタイル抜群のタレントの卵やネットアイドルなんかもいて「○○様」と崇め奉られていたりする。彼女たちは人気があるので2ショットチャットは常に順番待ち状態。そんな時は前もってメールで待ち合わせするらしい。
私の初めての客だったその男は、自分のやりたいことを済ませ、あっという間に去っていった。時間にして1分。報酬確認のページを開いたら、1ポイント加算されていた。1ポイントは50円。男から50円いただいたことになる。
後で、男から「すいませんでした」というお詫びのメールを受け取った。
お客様からのメールは100パーセント返信が集客の近道。
「こらぁ~っ<`~´> (プンプン)、○○さん、ダメだお、あんなことしちゃ☆。△△(私の源氏名)をあんまりいじめないでよぉ~~(>_<)。もしや、他の女の子にもおんなじことしてるぅ?今度くる時は、ちゃんとお顔見せてお話ししてくれないと、△△マジキレるよぉっっ(@_@)☆☆」‥‥返事を書きかけて、やめた。
★2004.12


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